夏の定番行事となった野外音楽フェスティバルは、環境保全や人の絆をテーマに育ってきたイベントだ。東日本大震災とそれに伴う環境破壊に覆われた夏、九州の各フェスにもその影響が見え隠れした。
キューバのダンス音楽を軸に幅広いジャンルが集う「イスラ・デ・サルサ」(8月6、7日、福岡市・シーサイドももち地行浜)は第15回の節目。波打ち際で、風に吹かれ、暮れゆく空を見ながら体を揺らす――。そんな野外フェスのだいご味が存分に味わえる。メーンとして欧州から迎えたサルサオーケストラ「カジェ・レアル」は、今回のために「上を向いて歩こう」を披露。最終日のアンコールには、メンバー全員が「SAVE JAPAN」と文字の入ったTシャツで現れた。
福岡出身の浜崎あゆみらJポップの人気アーティストが全国を巡回する「a―nation」(8月6日、福岡市・海の中道海浜公園)は、5年ぶりに福岡で開催。活動停止を発表した後藤真希も元気なステージを見せた。客席には「東方神起」Tシャツの中年女性も多く、Kポップ人気の広がりも感じさせた。ひたすら元気でショーアップされたこの催しも、今年は「for Life」と掲げ、電源車で電力をまかない代金の一部を義援金に回すなど、被災地支援を運営の柱に据えていた。
音楽やアーティストと出会い、自然の力を実感し、ステージの上も下もなく一つになる。フェスでは、時にそんな瞬間が訪れる。
長崎市の稲佐山公園で開かれた「スカイジャンボリー」(8月21日)でのサンボマスターのステージもその一つだった。ボーカル山口隆は福島出身。同郷の仲間と作った福島に捧げる曲を歌う前にこう呼びかけた。「おれはふるさとを思って歌う。君たちは君たちのふるさとを思いながら聞いてくれ」
福岡に夏の終わりを告げる「サンセットライブ」(9月2〜4日、糸島市・芥屋〈けや〉海水浴場)は、自然の恵みへの感謝を掲げ、19回目を迎えた。全国最古参のフェスに数えられる。最終日には反原発を表明し芸能事務所を辞めた俳優の山本太郎がトークに登場。メーンステージでトリを飾った泉谷しげるは、盟友忌野清志郎の反原発ソング「サマータイム・ブルース」「ラヴ・ミー・テンダー」を歌い、会場を沸かせた。
しかし、反原発は出演者らの多彩な主張・表現の一つに過ぎない。19回の歴史を通じた「LOVE&UNITY」(愛と繋〈つな〉がり)の合言葉の下に、音楽もアートもお笑いも、そして言論も自然の中で反応しあう場に成熟してきたのだ。今年は、解剖学者の養老孟司さん、古武術研究家の甲野善紀さんらがトークに登場。道を究めた先達の「今を生きる」ヒントに、若者が耳を傾ける姿が印象的だった。
街や自然に抱かれて育ったフェスならではの包容力を感じた夏だった。(西正之)
■秋も九州各地で続々
秋の気配が濃いとはいえ、まだまだ熱いフェスがこの後も控えている。
サンセットと並ぶ九州最大級のフェス「HIGHER GROUND」は例年より1カ月遅く、17、18日に福岡市の海の中道海浜公園野外劇場で開催。斉藤和義、スガシカオ、いきものがかり、スキマスイッチなど人気アーティストが出演する。
佐賀県吉野ケ里町の吉野ケ里歴史公園では25日、野外音楽祭「Nice Time」が開かれる。bonobos、向井秀徳、七尾旅人らが出演。
沖縄では10月1、2日、読谷村のヨミタンリゾート沖縄でモンゴル800主催の「What a Wonderful World!!」がある。小田和正、ザ・クロマニヨンズなどのほか、HY、オレンジレンジら地元の人気バンドが勢ぞろい。大ベテラン照喜名朝一、登川誠仁、大城美佐子による「沖縄トラッド」も注目だ。
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